0. このノートの位置づけ
このページでは、点・位置・座標・ベクトル・基底・行列を分けて整理する。座標変換や相対性理論へ進む前に、「対象そのもの」と「測り方」を区別する。
1. 基底はものさしである
標準基底は、次の2本の基本ベクトルである。
$$\mathbf e_1=\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix},\quad \mathbf e_2=\begin{pmatrix}0\\1\end{pmatrix}$$
ベクトル \(\begin{pmatrix}3\\2\end{pmatrix}\) は、右向き基本ベクトルを3個、上向き基本ベクトルを2個足したものとして読める。
$$\begin{pmatrix}3\\2\end{pmatrix}=3\mathbf e_1+2\mathbf e_2$$
2. 同じベクトルでも座標は変わる
新しい基底を、
$$\mathbf b_1=\begin{pmatrix}2\\0\end{pmatrix},\quad \mathbf b_2=\begin{pmatrix}0\\1\end{pmatrix}$$
と決める。この新しいものさしで見ると、標準座標で \(\begin{pmatrix}6\\2\end{pmatrix}\) だったベクトルは、B座標では \(\begin{pmatrix}3\\2\end{pmatrix}_B\) と書ける。
座標とは「場所そのもの」ではなく、どの基底を何個ずつ使えばそのベクトルに届くかを表す数字である。
3. 斜めの基底
基底は、必ずしも水平・垂直である必要はない。
$$\mathbf b_1=\begin{pmatrix}1\\1\end{pmatrix},\quad \mathbf b_2=\begin{pmatrix}1\\-1\end{pmatrix}$$
このとき、B座標で \(\begin{pmatrix}2\\1\end{pmatrix}_B\) と表されるベクトルは、標準座標では次のようになる。
$$\begin{pmatrix}1&1\\1&-1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}2\\1\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}3\\1\end{pmatrix}$$
基底を列に並べた行列は、その基底での座標を標準座標へ翻訳する装置である。
4. 点・位置・座標・ベクトル
| 概念 | 整理 |
| 点 | 空間内の場所 |
| ベクトル | 点と点の差分・方向・関係 |
| 基底 | 観察単位・ものさし・評価軸 |
| 座標 | 原点と基底に依存したアドレス表記 |
| 行列 | 変換、または基底設定の記録 |
点Pは、座標がまだ与えられていなくても、空間内の点としては決まっている。ただし、その点Pを数字で表すには、どこを原点にするか、どの基底で測るかが必要になる。
5. 原点とは何か
数学では、原点は「ここをゼロと決める」という基準点である。宇宙に絶対的な原点があるわけではない。物理では、原点はしばしば観測者のいる場所、観測者の時計がある場所、または測定の基準にする事象として置かれる。
座標変換とは、対象そのものを変えずに、測り方を変えることである。ここから次に、能動変換と受動変換へ進む。